一万一千本の鞭
昔々、まだFemdomやSMに関する情報が全然少なかったころ、ギヨーム・アポリネールというフランスの詩人の書いた、一万一千本の鞭という小説を読んだことがあります。これ、完全に題名に騙されたパターンで、僕が期待するような素敵な鞭打ちシーンは皆無で、変なおっさんの性の冒険コミック小説みたいな内容だったと記憶しています。アポリネールさんは、芸術系に興味のある方々にとっては、それなりに重要な役割を果たした方だったようですが、題名に騙された僕としては、何だかつまんないことを書く変な作家、という印象しかありませんでした。
さて、なんでこんな古い話を思い出したか？というと、、。
この日の鬼様。増々妖しく、危険度アップです。
先日ユリイカで、一万一千本の鞭みたいなシーンというかコントみたいな出来事があったからです。
久しぶりのユリイカで、ユリイカの賄いに命を懸けているヘンテコマゾのタケや、日本に来ると殆ど毎日ユリイカに入りびたりのおかしな外人マゾのジョンテと近況の交換会話をしていたら、いつの間にか鬼様がこれまた馴染みのマゾのイノウエを両手頭上で天井に拘束してブルウィップで巻鞭をし始めたのです。
イノウエを巻鞭する鬼様。足元に転がっているのは、その直前まで鬼様が電流流して遊んでいた別のマゾ。
と、ここまではユリイカでは当たり前の光景なので、誰も特別の注意を払っていなかったのですが、チラチラと聞こえてくる会話がどうもオカシイ、、、。
イノウエは僕に輪を掛けたお喋りマゾで、イノウエの場合は鞭で叩かれながらも、悲鳴の替わりに喋るという特技の持ち主なのですが、鬼様とイノウエの会話が何か変、、。
ビシ～
ヒェ～、い、痛い～、一回です～。という普通の悲鳴に加えて、なにやらイノウエが色々と言い訳をしているのですが、
それに被せるように鬼様の口から、
一億発、
とか、
全然減らないじゃん、
とかいう言葉が漏れ聞こえて来ます。
状況を整理すると、どうやらイノウエは過去から長期に渡って、鬼様から命じられた課題を未解決に放置した様子で、その罰として与えられた鞭打ちの回数が溜まりま溜って一億回に達していたらしいのです。
もちろん、普通の借金計算で一億回とかにはなりませんが、鬼様流の高利貸しも真っ青の複利計算だとそういうことになるらしく、イノウエがどんなに悲鳴をあげても、イノウエの鞭借金は金輪際は減らないという悪循環に陥っていたのでした。
相当長いこと鬼様の巻鞭のビシ～と言う音と、鞭の合間のイノウエのお喋りが続いたあとで、突然鬼様とイノウエの間で、一億回の鞭打ちを３万回に減額するという合意が成り立って、発表されました。
その主たる理由は、一億回だと、冷静に考えれば毎日千発叩いても、10万日＝約273年掛かるので、ちょっと無理ということになったらしく、生きているウチに終了可能な３万発に落ち着いたらしいのです。
でもしかし、その３万発にはトイチ（＝10日で一割）という昭和の高利貸し得意の金利計算が付くことになったので、10日毎に3000発叩かれないと、ドンドン増えて行くという、中々大変な内容ではありました。
というわけで、この日のイノウエのミッションは巻鞭3000発で10日の利息分だけは払うというものだったのですが、、。
イノウエのお喋り癖がここでも災いすることになりました。イノウエはお喋りがうるさいとオジキがおっしゃって口にドラムのスティックみたいな棒を咥えさせられていたのですが、お喋りイノウエがそれを何度も口から外して、喋るところを咎められ、せっかく受けた100発とか200発を一瞬でゼロに戻されていたのです。
恐らく300発くらいが何もなかったことにされた後に、ユリイカの新人の雅さんが練習をしたいということで、イノウエの体で約500発くらいの練習をしたのですが、それは鬼様とオジキの相談の結果、50発と認定されました。
と言う訳で、この日のイノウエは3万発から50発だけを引いてもらって、29950発になったのですが、トイチ利息なのでこの後どうなるかは想像に難くありません、、、。
ユリイカ流「一万一千本の鞭」誕生の秘話なのでありました。
結局50発だけが認定されたイノウエ。これから毎日これくらい叩かれないと、借金が減らない計算です。
僕の方は、鬼様がシフト時間の最後の30分を使って、
今日は100発ね。
というお話でお尻をケインで叩いて下さったのですが、ほぼ6カ月に渡ってケインを受けていなかった僕のお尻は極端に弱体化しており、60発を超えた辺りでお尻から血が出始めてしまったので、70発で中止になりました。
僕のお尻のあまりの弱体化に鬼様もビックリ、という感じで、僕はイノウエの借金の心配とかしている場合ではなくなりました。
